2030年の世界地図帳

【第2章】①貧困

貧困とは

⒈お金が無いこと

SDGsでは、「1日1.25ドル未満で暮らす人々」を極度の貧困としているほか、世界銀行では「1日1.9ドル未満で暮らす人々」を国際貧困ラインに位置付けている。

いずれも、この金額を下回ると「最低限の栄養・衣類・住まいのニーズが満たされなくなる」状況を意味する。

⒉未来の可能性が無いこと

1998年に貧困についての研究でノーベル賞を受賞した経済学者、アマルティア・センが提唱した「ケイパビリティ(潜在性)・アプローチ」に基づいて、貧困を個人が秘める可能性の多寡で測定すると、未来が開かれていないことも貧困と言うことができる。

たとえ現在の収入が少なくても、給与の上昇が見込めたり、転職してより良い条件で働ける可能性がある場合は貧困とは言えないし、逆に、改善の見込めない閉ざされた環境での生活を強いられている場合は貧困と言える。

アフリカは何故貧しいのか

悲惨な歴史

アフリカは16世紀以降の奴隷貿易、19世紀以降の植民地支配によって西欧列強に搾取される時代が続いた。

20世紀も中盤になってようやく独立国家が相次いで誕生したが、東西冷戦のあおりをくらって各地で内戦が勃発。冷戦の終結後も民族同士の争いが絶えない。

開発を阻む「資源の呪い」

アフリカには巨大な油田を擁する産油国がいくつもある。

ただ、豊富な資源を持つ国の為政者は、国内インフラの開発努力や教育の拡充などをせずとも莫大な富を得られるので、二次産業・三次産業も育てる必要がなかった。すると、市場が空洞化して富の再分配が行われず、貧富の差が極端に拡大する。

近代的な制度が定着しにくい

近代は国民国家の時代だが、アフリカはそれを経験することが無いまま現代に至った。政府も莫大な資源から富を得られるので国民の税収に頼る必要が無く、資産を分配するという価値観がそもそもない。

また、国境線も恣意的に定められたものなので、国家への帰属意識も薄いということも影を落としている。

先進国内部の相対的貧困

ギグ・エコノミーとフリーランス型の貧困

誰でも簡単にできる安価で保証のないフリーランス業は、誰でもできる手軽さゆえに労働単価が低く抑えられている。

これを本業にすると、貧困から抜け出すのが難しくなる。

シングルマザーの貧困

日本の場合、シングルマザーの実に半数以上が貧困層となっている。その多くが非正規雇用で、雇用機会の制約がそのまま貧困に陥る要因となっている。

高齢者の貧困

日本の生活保護受給世帯のうち半数近くが高齢者で、一度貧困に転落すると自力で脱出することが難しく、未来への可能性も閉ざされている。

子供の貧困

親が貧乏だと子供は必然的に貧乏になる。その事実はその子本人にぬぐいがたい劣等感を植え付けて自信を喪失させるほか、教育の機会が奪われ、貧困が再生産されてしまう。

格差の固定化

格差が長期間にわたって固定されると階級が生まれ、やがて国民が分断されることも往々にしてある。これは持続可能な社会を阻む要因になりうる。